シフトレバーのシーケンシャル・モード [車]
(みんカラ 2011-07-02)
昔のATのシフトレバーは、ゲートが奥のPポジションから手前までストレートになっていて、Dレンジから手前に来ると3-2-Lなどとなっているもの(ホールドモード)や、ホールドボタンが付いているものが一般的でした。
最近では、Dレンジから横に動かすとマニュアルモードになって、手前に引いたり奥側に押したりしてギアや変速比を変更(ホールド)するものも増えています。
ここで重要なのは、『手前と奥』のどちらがシフトアップ/ダウンなのか、ということと、『横に動かす』方向です。
シフトアップ/ダウンの方向
最初に『手前と奥』のシーケンシャル・パターンについて。
これは僕が乗っているアテンザのシフトゲート。
アテンザのATシフトゲートは、メルセデスが特許を持っていたジグザグ状の『スタッガードゲート式』で、レバーをP位置でロックしないため解除ボタンが付いておらず、レバーをそのまま動かすタイプです。
また、アテンザやアクセラ等のマツダ車にはメルセデスが『ティップシフト』、BMWが『ステップトロニック』と呼ぶ擬似シーケンシャル(+/-)のゲートが付いています。
このようなシフトゲートの元祖はポルシェの「ティプトロニック」に装備されていたもののようです。
(「ティプトロニック」はゲート自体の名称ではなく、マニュアルシフトを可能としたオートマチック・トランスミッションシステム総体の名称という印象を僕は持っていました。それが事実かどうかはわかりません)
「疑似」シーケンシャルと書いたのは、市販車のこのようなシステムはアップ/ダウンの操作を電気的なスイッチで操作するためです。従ってアップ/ダウンの方向に設計的な制約はなく、メーカーの意向によります。
「疑似」でない本物のシーケンシャルは、レーシングカー用のドグミッションやオートバイ用の足で上げ下げする純粋に機械式の構造のものです。
さて、マツダのシーケンシャルパターンは、手前に引いてシフトアップ(+)、奥側に押してシフトダウン(-)になっています。
このパターンは少数派で、たいていのメーカーのシーケンシャルは引いてシフトダウン、押してシフトアップになっています。
レクサスISのシフトゲート。
これは普通のATのレンジ切り替えが、手前にくるほどローギアになっていることの名残りでしょう。
しかし、たとえばギャランフォルティスは引いてシフトダウン、押してシフトアップですが、同じ車体のランエボとラリーアートは逆で、引くとシフトアップになっています。
これはよりスポーツ性が高い車になると、メーカーの意向で競技用の車両と同じパターンにしているということです。
これはアルファロメオ・ミトのシフトレバー
上を拡大したもの
加速時は体が後ろに押しつけられるので、この体勢でシフトアップするにはレバーを手前に引く方が理にかなっています。
同じように、減速時は体が前に出る方向に重力がかかるので、この体勢でシフトダウンするにはレバーを前方に押す方が理にかなっています。
引いてシフトアップのシーケンシャルパターンを採用しているのはBMW、マツダ、一部の三菱車、アルファロメオのツインクラッチ搭載車あたりで、あまり数はありません。
BMWは昔は引いてシフトダウンだったようです。ポルシェは方向が何回も変更されたという話を聞いたような気がします。
トヨタはMR-Sがこのパターンを採用していましたが、トヨタのほとんどの車種は押して+になっています。TRDから+と-の向きを逆にするパーツが出ているので、少々出費はありますが多くのトヨタ車は簡単に変更できます(現在はTOM'Sからの発売になっているようです。「TOM'S GTシフター」)。
一部の自動車評論家が、異なるメーカーの車に乗るたびに戸惑うから向きを統一しろという(マツダに批判的な)内容の記事を書いていることがありますが、毎日違う車に乗る特殊な職業の人に合わせる必要性など微塵もありません。
本当は、慣れている方に変更できればいいんでしょうけどね。
ブレーキングしながらシフトレバーを前方にカチカチ押して、4速から1速まで落としていくと、スピードはあまり出ていなくても「なんちゃってWRC」気分でなんか楽しいです。
これが「引いてシフトダウン」のパターンだと、違和感があってそういう気分にはなりません。
これはトミ・マキネンのドライブの様子。やっぱ引いてシフトアップが普通ですよね。
シフトパターン:Dレンジからマニュアルモードへ
次にDレンジからマニュアルモードへの切り替えです。
国産車では運転席側にレバーを動かしてマニュアルモードに切り替えるものが多いと思います。外国車は助手席側にレバーを動かして切り替えるものが多いようですが、操作性は助手席側に押すよりも、運転席側に引くほうが自然な感じがします。
旧型アテンザ。ゲートのパターンは現行と同じですがティップシフトは助手席側に付いていて現行アテンザと逆です。ゴルフ5/6などいくつかの外車も同じパターン。
MC後も同じ。
左ハンドルの旧アテンザ。パターン自体は左ハンドル用になっており、ティップシフトは助手席側に付いています。
現行アテンザの左ハンドル。ティップシフトがドライバー側に移動しています。右・左ハンドルともそれぞれの専用品です。
マツダは国内用・左ハンドル用で作り分けていますが、外国車で右・左ハンドル共に同じゲートを使っているものもあります。
外車はウインカーとワイパーのレバー(スイッチ)を日本向け用には作っていないのがほとんどだと思いますが、ウインカーとワイパーは国際基準でウインカーが左、ワイパーが右です。右ハンドルのイギリス車でもそうなっています。ワイパーとウインカーレバーの位置については日本車がイレギュラーなので、これは仕方ないかもしれません。
シフトゲートについては国際基準でどうなっているのか知りませんが、シフトゲートが右・左ハンドル共用というのはちょっと『手抜き』という感じがします。
ゴルフ6.日本でいちばん売れる外車は助手席側にレバーを倒してマニュアルモード。シーケンシャルは引いてシフトダウン。
左ハンドル用も同じ。
これはBMW3シリーズの右ハンドル。マニュアルモードの切り替えは助手席側に倒すように見えます。シーケンシャルは引いてシフトアップ。
BMW3シリーズ左ハンドル。こちらは運転席側に引くように見えます。左ハンドルと右ハンドルで同じものを使用?
シトロエンDS3のゲート式シフト。右ハンドルは左ハンドル用のゲートを流用していると思われます。シーケンシャルは引いてシフトダウン。
C4セダクションも同じ。
C4エクスクルーシブの左ハンドル。パドルシフトを採用しているのでティップシフト無し。
C4エクスクルーシブの右ハンドル。左ハンドル用と同じものを使用。これはちょっと”手抜き”だなあ...デザイン的にかなり違和感が。
FIAT500 ツインエア。ティップシフトは左側?。いやこれは真ん中というべきか...引くとシフトアップです。
フィアットのサイトを見たら、こんなことが書いてありました。
シーケンシャルシフト式の採用で、シフトレバーを手前(“+”側)へ引くとシフトアップし、前方(“ー”側)へ押すとシフトダウンできます。特筆すべきは、今回から操作方法を一新。モータースポーツ用のマシンと同じく、走行中の体感Gに合わせたとも言えるシフトアップ/ダウン方法の採用で、より直観的な操作ができるようになりました。
AUDI A7。左ハンドルも右ハンドルも助手席側に倒すように見えます。シーケンシャルは引いてシフトダウン。
AUDI A7の左ハンドル。
C4 MT。MTはシフトパターンも一緒(のはず)なので左/右ハンドルでの違いはない(はず)。
MTのH型ゲートの場合、加速/減速方向とシフトパターンは一致しないので、個人的には加速/減速方向と操作の方向が常に一致しているATのシーケンシャルのほうが好きです。ダイレクト感がMT並みなら言うことなし。
シーケンシャルのドグミッションを搭載した市販車があっても面白いと思いますが、やっぱり一般的じゃないかな。。。
ランエボのSST。シフトレバーのロック解除はシフトノブの下にあるリングを引き上げる方式で、ゲートはストレート。シーケンシャルは引いてシフトアップ。
メルセデスCクラス。横方向に動かすとシフトアップ/ダウンという変則的な方式。まあベンツのやることに間違いはないとは思うのですが、戸惑いそう。
シーケンシャルの無いプリウスのシフトレバー。
ひと目見てどう動かしていいのかわからない操作ロジック。ネットで検索すると、プリウスがよく店に突っ込む原因がこれではないかという記事が多数あります。
左ハンドル用は逆。
マニュアル並みのダイレクト感を得られるツインクラッチで、スタッガードゲート式で、引いてシフトアップのシーケンシャルで、マニュアルモードは運転席側にレバーを倒す...という車種は、僕が知っている範囲では一台もありません。
次期アテンザのSKYACTIVがいちばん近いのかなと思います。
シフトレバーのパターンを車を選ぶ基準にするということはあまり考えられませんが、僕は『引いてシフトアップ』のほうが好きですし、左ハンドル用のゲートをそのまま右ハンドル用に流用し、『手抜き』をしているにもかかわらず価格の高い外国車には少々幻滅を感じます。
あくまで好みの話ですけどね。
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