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左足ブレーキでアクセルとブレーキの踏み間違い事故は減るのか [車]

(みんカラ 2011-08-06)

毎日のようにアクセルとブレーキの踏み間違いによる事故のニュースがあります。
アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故は1年間に6000件以上発生し、1万人近い死傷者が出ているそうです。ニュースになっているのは氷山の一角、ということでしょうか。

先日ネットサーフィンをしていたら、「車の運転で交通教習と異なる『左足ブレーキ』が増加 この「左足ブレーキ」はアリ?ナシ?」という意見を投稿しているページがありました。
(※公開はすでに終了しています)

8月4日までの投稿では、左足ブレーキに『反対』が約半数、『賛成』と『どちらでもない・その他』が1/4ずつくらいになっています。
ざっと斜め読みしてみましたが、左足ブレーキ容認派がどちらかといえば『お好みで』というスタンスなのに対し、左足ブレーキ反対派はかなりヒステリックに『危険である』『違法行為』などと決め付ける意見が多いようです(もちろん違法ではありません)。
容認派は明らかに右足ブレーキ・左足ブレーキの両方の経験に基づいて意見を述べているのに対し、反対派は左足ブレーキを使ったことがなく、未経験のまま反対意見だけ声高に叫んでいる印象が強いです。

ちなみに左足ブレーキはクラッチより数段微妙な操作感覚が必要で、練習しなければ確実に急ブレーキになってしまい大変危険です。
AT免許しかなく、左足でクラッチを操作する感覚すら知らない人がいきなり左足でブレーキを踏んだら、左足ブレーキ反対派になってしまうかもしれませんが、ある程度練習して慣れてしまえば誰でもできると思います。

僕自身は10年くらい前から左足ブレーキを使っています。2ペダルAT車を運転するときだけで、マニュアル車で左足ブレーキを使うことはありません。
最初は安全な場所で右足を添えて両足でブレーキを踏みながら、徐々に慣れていきました。
左足ブレーキと言っても100%左足で踏んでいるわけではなく、通常の走行時はほとんど右足でブレーキを踏んでいます。
左足ブレーキは駐車場からの発進、一時停止から出て行くとき、車庫入れなどが主です。その場合はほぼ100%左足でブレーキを踏んでいます。
どちらの足で踏んでいるかを考えることもなく、足が自動的に動いて踏み分けています。
数回、左足で急ブレーキを踏むことがありましたが、無意識に右足はアクセルから浮き、左足でブレーキを踏んでいました。

左足ブレーキ反対派が必ず述べる意見に、左足でブレーキを踏むと右足はどこを踏んで踏ん張るのかとか、左足でブレーキを踏むと腰が浮くとかいうのがあります。
別に右足を踏ん張らなくても左足でブレーキを思い切り踏めますし、だいたい右足だろうが左足だろうがブレーキを踏んで腰が浮くなんてどうやったらできるのでしょうかねぇ...ドライビングポジションがおかしいとしか思えません。

ドライビングスクールに行くと、受講者はほぼ全員、ドライビングポジションをかなり矯正されるといいます。
確率的に言って上に挙げたサイトに意見を書いている人のほとんどが、「ドライビングポジション矯正組」でしょうから、そういう人の意見に大した意味はないと思います。
もっとも、僕も矯正される口でしょうし、左足ブレーキが正しいとかいうつもりもなく、それを人に勧めるつもりもありません。

人の意見は様々ですが、左足ブレーキで事故が増えるとか減るとかいう資料はなく、アクセルとブレーキの踏み間違い事故については年齢別、性別とかの大雑把なグラフしか見たことがありません。
(事故が多いのは20代と60代以上でした)
なので客観的な資料に基づく正しい意見というのは現状、無いのではないかと思います(だから意味の無い雑多な意見ばかり多くなる。ここで僕が書いていることも含め)。

資料といえば、交通事故の詳細な統計データを簡単に見られるようなサイトもありません。

(財)交通事故総合分析センターというのがありますが、資料は有料です。交通事故のデータなどは、本来は広く公開すべきものです。
ここの理事長は警察の天下りで、交通事故の統計データは天下りの高額報酬に利用されているのでしょうか。
以前聞いた話ですが、ドイツの自動車メーカーは自社製の車が交通事故を起こすと、現場に自社の調査員を派遣して詳細なデータを取っていたそうです。
日本の自動車メーカーはそういうことをやっているのかどうか知りませんが、車種別の事故データなど見たこともないです。保険会社は持っているでしょうし、どこかで見られるのかもしれませんが。

昨年、アメリカでトヨタ車の急加速に伴う事故が問題になりましたが、結局、アクセルとブレーキの踏み間違いという結論になったようです。
メカニズム的に欠陥や誤作動が100%ないということもないでしょうが、おそらく『ブレーキを踏んでいるのに加速した』という事故の大半はペダルの踏み間違いと思われます。
今後データロガーが全ての車に装備されるようなら統計的に有意なデータが出るでしょう。

NHKの実験
さて、僕は最近知ったのですが、NHKがペダルの踏み間違いを心理的な面などから検証した番組を昨年放送していました。
交通心理学が専門の九州産業大学・松永勝也教授の協力のもとに番組が実験を行ったということです。
(※動画は見られなくなっていますがアーカイブが残っています)

この番組では二つの実験を行なっていて、ひとつは運転中に気が散った場合の行動、もうひとつは体の姿勢とペダルの踏み間違いについてです。

最初の実験は、シミュレーターの画面にAの文字が出たらアクセル、Bが出たらブレーキを踏むというもの。

(以下画像の出典はNHK)
nhk1.JPG

nhk2.JPG

実験中の被験者の携帯電話を予告抜きで鳴らすと、それまで間違えずに踏み替えていた被験者がBの文字を見てもアクセルを踏んでしまうミスが多発するようです。

nhk3.JPG

なにかがきっかけになって一度間違えてアクセルペダルを踏んでしまうと、脳は正しい行為をしていると判断しているため間違いと気づくまで同じ行為を続けてしまうらしいです。
実際に公道でそれが起こると、違うペダルを踏んでいることに気が付く前に破綻的状態に至る、つまり交通事故を起こす、ということのようです。
脳科学的にはどうなのか、澤口先生のコメントを聞いてみたい。

nhk4.JPG

二番目の実験は、後ろを向いた状態で正確にペダルを踏みかえられるかを見るもの。
アクセルとブレーキの踏み間違い事故の35%が駐車場でバックをしているときに起こるということについての実験です。

nhk5.JPG

実験では、体をひねって後ろを見ている状態だとアクセルとブレーキペダルを正確に踏み分けることができず、ブレーキのつもりでアクセルの位置に足を運んでしまいます。

nhk6.JPG

以上のふたつの実験は右足でアクセルとブレーキを踏み分けていますが、右足でアクセル、左足でブレーキという試験をやったらどういう結果が出るのか興味深いところです。
最初の実験で左足ブレーキに優位性があるのかどうかはわかりませんが、2番目の実験では最初から右足でアクセル、左足でブレーキペダルを担当させていれば、上体の姿勢がどうであれ被験者がペダルの位置を喪失することはありえず、これについては確実に左足ブレーキが優位と思われます。

構造上の問題
番組の中でも出てきますが、全く逆の働きをするのにもかかわらず、同じ『踏む』という操作をするペダルが二つ並んでいることは構造上の大きな問題であると思われます

昭和60年頃からAT車が急速に普及し始めた頃から踏み間違い事故が多発し、ペダルの構造を見直すべきだと指摘されたことがある。それについて当時、メーカーは車両の問題ではなく、ドライバーの操作ミスと結論している。メーカーはドライバーが操作に慣れれば減っていくと考えていた。
しかしその後20年で600人近い死者が出ている。
番組中より

ペダルの位置
最近の車は4隅ぎりぎりまでタイヤをもっていって、さらに室内を目一杯広くしているような設計のものが多く、右ハンドルの車ではアクセルペダルの横にタイヤハウスがあったりします。
プリウスやBMW X1(右ハンドル)を運転したとき、運転席に乗って最初に思ったのが、アクセルペダルがやけに内側にあるなあ、ということ。普通にアクセルペダルを踏もうとすると、タイヤハウスに足が当たります。
軽自動車も同じような感じです。軽自動車は運転席の足元の幅自体が狭いので、アクセルとブレーキの間隔も狭く、踏もうと思えば右足で両方のペダルが普通に踏めてしまいます。ブレーキペダルは普通車よりも左寄りなので、左足でブレーキを踏むほうがむしろ自然なくらいです。

根拠があるわけではないのですが、全体的にペダルは中央寄りになってきているような印象があります。
これだと、右足の真正面には何も無く、やや内側にアクセルペダルがあり、さらに左寄りにブレーキペダルとなります。このようなペダルの配置で咄嗟に急ブレーキを踏もうとして、アクセルペダルをブレーキのつもりで踏んでしまうことにはならないか、と疑問が生じます。

MT車なら踏み間違い事故は起こらないか
日本でのMT車の販売比率は5%を切っていたと記憶していますが、このくらいの数になってしまうと統計的に有意なデータが出るかどうかわかりません。ペダル踏み間違い事故のAT/MT比率という資料を見たこともありません。MTのほうが圧倒的に多いヨーロッパでもペダル踏み間違い事故はそれなりに起こっているようなので、MTなら起こらない、ともいえません。

日本ではAT車を選ぶドライバーより運転に対するこだわりが強く、運転そのものにも関心が高い(と思われる)MT乗りのドライバーのほうが、運転という行為に対する意識は高いという気はしますがこれも根拠はありません。
アクセルを間違えてベタ踏みしてしまっても、クラッチさえ切ってしまえば駆動力が伝わらないという構造上の有利な点はあります。

ではMT車なら確実にクラッチを切れるのでしょうか。
左足ブレーキ否定派の方々がいう意見にこういうのがあります。咄嗟に右足でブレーキを踏んだとき、左足はフットレストの上で踏ん張っている。左足がフットレストの上で踏ん張っているからこそ、右足はブレーキを強く踏み込める。だそうです。
この理屈だと、ブレーキのつもりでアクセルペダルを床まで踏みつけていた場合、左足はフットレストの上で踏ん張っているそうなのでクラッチペダルは踏めません。
なのでAT車でもMT車でも踏み間違いを起こした場合の結果は変わらない、ということになります。
左足ブレーキ否定派の方々の中には、MT車はクラッチペダルがあるからアクセルとブレーキを踏み間違えても事故には至らないという意見を述べる方もけっこういるのですが...

左足ブレーキは一般的ではないのか
左足ブレーキは自動車教習所では教えていないはずなので、教わらないことはやるな、というのが左足ブレーキ否定派の意見で多く出ます。
まあ、教習所で教わらなくてもやっていることはいろいろあると思いますが、それは置いておいて。

自動車のメーカーに聞いても『ブレーキペダルを左足で踏むように設計していないので右足で踏んでください』という当たり障りの無い返事が返ってきます。それならなぜブレーキペダルの幅は広いのか、ということにもなりますが、それも置いておいて。

AT大国アメリカでは左足ブレーキをドライビングスクールで教えるそうで、そういえばサンフランシスコ市警察のハリー・キャラハン刑事も左足でブレーキを操作していました(ダーティーハリー5の冒頭)。
坂の多いサンフランシスコでは左足ブレーキが使えないと急坂で苦労するかもしれません。
ジョン・グリシャムの小説「パートナー」には、ブラジルでは通常、左足をブレーキの上にかけて運転するという旨の記述があります。
ヨーロッパの数か国では、左足ブレーキが使えないと免許の取得ができないという話も何かで読みました(真偽は未確認)。

普通に考えると、ブレーキペダルはどちらの足でも踏めるように幅広になっており、左足ブレーキがスタンダードでないのは日本の教習所では教えないというローカルルールによるもの、なのかもしれません。

結論は出ませんが
左足ブレーキで事故が増えたか減ったかという客観的なデータがなく、肯定派も否定派も自分の意見を言っているだけ、という状況ではどうやっても結論は出ません。
まず、構造的に『役割が正反対で同じ[踏む]という操作をする』ペダルが並んでいることと、ペダルを踏み間違えても正しいペダルを踏んでいると判断してさらに強くアクセルを踏んでしまう[心理学的行動]を抱える人間が操作していることが問題で、それらを変えない限り踏み間違い事故はいつまでたっても続くと思います。

自動車が普及しきった現在、ペダルを別構造にするには今からではかなり難しいかもしれませんから、ペダルを踏む足をアクセルは右、ブレーキは左と完全に分けてしまうというのはひとつの解決法ではあると思います。
また、ボルボやスバルの障害物認識自動ブレーキも有効な手段でしょう。

ペダルの踏み間違い事故が後を絶たず、高齢化社会でこれからもっと増える可能性も否定できませんから、これに対する対策は国がやらなければいけないと思います。

ブレーキペダルをもっと左寄りにして、右足はアクセルしか踏めず、左足はブレーキしか踏めないという構造の車を製作し、実験を重ねてみたらもしかしたらいい結果が出るかもしれません。
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